大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和27年(ラ)20号 決定

青森地方裁判所が昭和二十七年五月十三日にした電話加入権譲渡命令中「青森電話局第四五八二番電話加入権」に関する部分に対する抗告を棄却し、「同第二六五〇番電話加入権」に関する部分に対する部分を取消す。

二、理  由

本件抗告の要旨は「原決定を取消す旨の御裁判あらんことを求める。」というにあり。

よつて按ずるに、本件記録によれば、相手方は抗告人に対する強制執行として相手方と抗告人及び亀田秀四郎との間の青森簡易裁判所昭和二十五年(ロ)第一二五号貸金事件の仮執行宣言付支払命令の正本に基き、昭和二十七年一月二十五日の青森地方裁判所より抗告人名義の青森電話局第四五八二番及び同第二六五〇番の電話加入権に対する電話加入権差押命令を得て、右電話加入権の差押をし、ついで青森地方裁判所に昭和二十七年四月七日右第四五八二番電話加入権につき、同月二十三日右第二六五〇番電話加入権につき各譲渡命令の申請をし、同裁判所は評価人の評価に基き本件電話加入権を支払に換え債権者たる相手方に譲渡する旨の命令を発したものであることが明かである。而して右譲渡命令中右第四五八二番電話加入権については譲渡命令を発するにつき妨げとなるべき原因が認められないが、右第二六五〇番電話加入権については既に昭和二十五年七月十九日南津軽郡畑岡村長から抗告人に対する村税(リンゴ税)金七千五百五十六円の滞納のため差押られていたことが、記録添付の南津軽郡畑岡村長の電話加入権差押競合による申立書及び交付要求書の記載に徴し認められる。このように二箇の差押が競合する場合に、いずれの債権者も優先弁済を受けることを得ないものであるときには、差押財産の対価を各債権額に応じて配当する要あるべく、若し又各債権者間に弁済につき優劣の別がある場合には優先弁済を受け得る権利を有する債権者の申請により、譲渡命令をなすは格別、劣後的弁済を受ける権利を有する債権者の申請によつては、譲渡命令をなし得ないものと解する。本件において前記のように相手方の差押債権は貸金であるのに、南津軽郡畑岡村長の差押債権は村税滞納金であるから、地方税法第十五条により相手方の差押債権に先だつて徴収し得るのであるから、相手方の申請によつては前記第二六五〇番電話加入権に対し譲渡命令をなし得ないものといわなければならない。

以上説明のとおりであるから、本件抗告は前記第四五八二番電話加入権に関する部分は理由がないが、右第二六五〇番電話加入権に関する部分は理由があるから、この部分は取消すべきである。なお相手方が右第二六五〇番電話加入権の譲渡命令の申請につき原決定がなされた後である昭和二十七年五月十九日取下書を提出したことは本件記録に徴し明かであるから、相手方の同加入権の譲渡命令の申請について特に却下の裁判をすることを要しないものと解する。

よつて民事訴訟法第四百十四条、第三百八十四条、第三百八十六条に則り主文のとおり決定する。

(裁判官 谷本仙一郎 猪瀬一郎 石井義彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!